BMW ALPINA B7 TURBO COUPÉ /1- 40年にわたるスタイル・アイコン
1984年にE24/1をベースにしたBMW ALPINA B7 Turbo Coupé /1が生産に入った際、40年後にこれが不動の自動車デザイン・クラシックとなるとは誰も予想していませんでした。しかし、このモデルが現在も人気のコレクターズ・アイテムである理由は、その時代を超えたエレガンスだけでなく、独自の技術にもあります。
1984年6月の『auto motor und sport』誌は次のように記しました: 「アルピナはBMWの6気筒エンジンから想像を超えるパワーを引き出しました。3.5リットルの排気量から330PSを発揮し、ドイツの自動車工業における性能の頂点を示しています。トルクも非常に大きく、500Nmは世界的に見ても最高の数値です」
ブルカルト・ボーフェンジーペン自身が「きわめて快適でラグジュアリーなツーリング・スポーツカー」と呼んだこのモデルは、パフォーマンスとドライビングセーフティ、燃費と静粛性、装備とデザインの組み合わせにおいて、完璧なクルマとしての絶対的ベンチマークを示していました。
この力強いクーペの優れた性能は、実際の運転で明らかになります。高いトルクにより、60 km/hから5速で力強く加速できる一方で、市街地では非常に低い回転数で走行することができ、燃料効率に優れ、環境にも優しいのです。これは、創業者ブルカルト・ボーフェンジーペンが製品開発において常に重視してきたことといえました。BMW ALPINA B7 Turbo Coupé /1はきわめて静かな車であり、製造が始まった当時、わずか4年後に施行されることになる厳しいEC騒音基準をすでにクリアしていたのです。
発揮されるハイパフォーマンスに対して、ありえないほど良好な燃費は、このターボエンジンが非常に優れた熱効率であることを示しています。Dr.Cserによると、加給が始まる前の6気筒エンジンの優れたレスポンスとブースト領域へのスムーズな移行は、主にターボチャージャーとレゾナンス・インテークマニホールドの組み合わせによって実現されています。ブースト圧は、ブーストコントロールダイヤルを使って1.5バールから1.8バールの範囲で任意に調整可能です。これにより、必要に応じてターボエンジンの出力を下げることができ、特に悪天候時には有効なものでした。また、エンジンの油圧と油温、リアアクスルの油温、ブースト圧を表示するデジタル・ディスプレイが、このモデルならではの印象的な標準装備の一部となっています。
エレガントなボディシェイプに加えて、軽量な17インチのアルミホイール、深くシェイプされたフロントスポイラー、ワイドなリアスポイラーは、高速走行時にフロントおよびリアのリフトを低減し、空気抵抗を改善し、クーペのエクステリアを印象的なものにしています。また、シャシーのポテンシャルは極めて高く、その性能を充分に発揮することが可能です。ビルシュタイン製のガス封入式ショック・アブソーバーとプログレッシブ・サスペンション・スプリングにより、硬めでありながら快適なシャシーセッティングが施され、ほぼニュートラルなコーナリング特性が得られています。
内装は、当時のテイストに沿った最高水準のデザインと快適性を備えています。スポーツシート、リアシート、サイドパネルには、細い非対称の青と緑のストライプが配された高品質なグレーのファブリックで被われています。直径380 mmのレザー・ステアリング・ホイールは、手縫いで仕上げられていました。また、充実した標準装備の一環として、100リットルのタンクシステムが搭載されているのも特筆すべき点といえるでしょう。
1984年4月から1987年8月までの間に、わずか110台のBMW ALPINA B7 Turbo Coupé /1が生産されました。この少ない生産数については、1986年12月の『auto motor und sport』誌によるポルシェ928 S4との比較テストの締めくくりでは次のように結ばれています。「この文章を書いている筆者は明確な結論が出せていません。特に価格が1万マルク増えても減ってもたいした影響はないのです。このクルマの価値は、 エクスクルーシビティを考えると理解しやすくなるでしょう。ポルシェは928を1日に20台生産する一方で、ALPINAは年間で50台のBMW ALPINA B7 Turbo Coupé/1しか生産していないのですから」
*本記事は独アルピナ社(ALPINA Burkard Bovensiepen GmbH + Co. KG )発行のニュースレターの翻訳であり、日本市場と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。