アルピナ・エンジニアリング有限&合資会社

アルピナ・エンジニアリングの原点は2011年に遡ります。BMWとの密接な協力関係を背景に、4人の従業員からなる独立したプロジェクト・チームを立ち上げ、BMWと連携した開発パートナーとしてさまざまな車種をコーディネートしてきました。現在は子会社となったアルピナ・エンジニアリング有限&合資会社で車両ダイナミクスと運転支援システムの開発責任者を務めるアンドレアス・ヴェルマーは、立上げ当初から在籍する一人です。

「パートナーと積極的に連携しながら車両の開発プロセスを設計し、共に作業を進めます」とヴェルマーが話すように、BMWとの協力関係は明白です。アルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン有限&合資会社は1983年から正式な自動車メーカーとなり 、ここで製造されるモデルはすべてBMW車をベースとしています。「もちろん、メーカーの活動や、その結果得られる車両全般の理解度の高さは、私たちにとって大きなメリットとなります」とヴェルマーは高く評価しています。2013年にはすでにエンジニア陣はシャシーとステアリングの分野で4件のプロジェクトを展開し、さらなる成長を遂げました。2018年にブッフローエ西部に新しい開発棟が完成したことは、アルピナ・エンジニアリングの歴史における重要なマイルストーンであるとヴェルマーは考えています。これによってプロジェクトの内容がいっそう濃くなり、開発エンジニアとテスト・メカニックのチームがより緊密に連携できるようになったからです。

ドライビング・ダイナミクスに関する深い経験

アンドレアス・ヴェルマー率いるチームでは現在、35名ほどのスタッフが働いており、シャシー、ステアリング、スタビリティ・コントロール・システム、タイヤ開発、ドライバー・アシスタンス・システムの分野で20件を超えるさまざまなプロジェクトに取り組んでいます。この素晴らしい数字は、アルピナ・エンジニアリングがここ数年で見せた絶え間ない成長の賜物です。プロジェクトは、内燃エンジン搭載車、プラグイン・ハイブリッド車、完全電気自動車など、さまざまなシリーズ、ボディ形状、駆動方式を対象としています。一方で、BMW Motorradや、ダカール・ラリーでのMINI X-raidチームとの協力といった特別な仕事を請け負っているほか、装甲車もプロジェクトのレパートリーに含まれることがあります。

現在、コンプリート・モデルのドライビング・ダイナミクスを調整する際には、エンジニアと開発メカニックの深い専門知識が活かされています。また、コンポーネント、調整作業やアプリケーションをテストする高品質のテストベンチを含む、ドライブ分野の統合チームも新設されました。多岐にわたる開発分野で、総合的な車両開発のプロセス全体にわたり高度なスキルが役立てられています。これは、DSCスタビリティ・コントロール・システムにも当てはまります。

緻密なテスト

このスタビリティ・コントロール・システムは、4WDシステム、スリップ・ブレーキ・コントロールを含む、お客様志向のさまざまな機能のひとつで、その調整は車両の特性に大きな影響を与えます。ドライビング・ダイナミクス機能は、安定性を保ちつつ、車両の俊敏性を向上させる必要があります。このために、システムと機能は一般の道路から離れた場所でテストされます。エンジニアは年に数週間、さまざまなテスト・コースやレース・コースでプロトタイプ車両を使用して、フランス南部、スペイン、スウェーデン、イタリア、ドイツなど、さまざまな条件下でテストを実施しています。開発担当者は、すべてのテストが無事完了し、モデルの量産が可能になる開発終了時までプロトタイプ車両に付き添います。

スタビリティ・コントロール・システムの開発サイクルの初期は一般的に、低摩擦値の調整、つまり雪上や氷上でのテスト・ドライブを行います。この時のエンジニアは常時、正確かつ機敏で、しかも安全な運転挙動に注意を払っています。さらに作業を進める過程で、ドライ路では高い摩擦値を、ウェット路では中摩擦値を追加していきます。ディファレンシャル・ロック、ダイナミック・ブレーキ・コントロール、ムース・テスト(突然現れる障害物を回避した際の車の挙動を見るテスト) での車両の傾きなど、特別な機能も調整します。ZF、コンチネンタル、ビルシュタイン、ピレリ、ミシュランといった有名なサプライヤーも現地に赴き、理想的な内容へと全体的に仕上げていきます。

アルピナ・エンジニアリングのチームで進める車両の総合開発の強みは、車両ダイナミクス、ドライブ・トレイン、コンプリート・ビークル、プロジェクト・マネジメントのスペシャリストたちと部門間の緊密なネットワークにより、最短ルートで迅速な意思決定を実現できることです。つまり、エンジニアのフィードバックに基づいてすぐに変更を反映できるということです。例えば車両がアンダーステア気味であれば、キネマティクス、エラストキネマティクス、スプリング、スタビライザーを調整し、ダンパーがソフトすぎる場合には新しいダンパーを組み上げて車両に取り付け、微調整や適用作業を続けることができます。

快適性・安定性と調和したドライビングプレジャーを実現

アルピナ・エンジニアリングは、若い人材を積極的に登用していることも特徴としています。若手の優秀なエンジニアたちも中核となって作業に携わり、数十年におよぶ開発経験を持つスタッフと力を合わせ、バランスの良いチームワークを発揮しています。「クルマの独立した “キャラクター” を開発することを常に目指しています。それぞれの運転特性と、ハードウェアとソフトウェアの完璧な相互作用を重視するのはもちろんですが、開発担当者の直感も頼りにしています」とアンドレアス・ヴェルマーは強調します。

最終段階では、お客様にとってどのような乗り物でなければならないのかという点を突き詰めて微調整を行います。「クルマでダイナミックな走りの軽快さとドライビング・プレジャーを感じられるようにすると同時に、高度な安定性と快適性を両立させることを目指します」

扱うプロジェクトの数と従業員数は今後さらに増えていく見通しです。「私たちは着実かつ健全な成長を目指しています。これからも胸を躍らせるようなプロジェクトが多数舞い込むことを期待しています」

 


*本記事は独アルピナ社(ALPINA Burkard Bovensiepen GmbH + Co. KG )発行のニュースレターの翻訳であり、日本市場と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。