BMW ALPINA B7 S Turbo

力強い走りを味わえるモデル

1981年になると、残り60台となったE12世代の5シリーズを使用し、サルーンのBMW ALPINA B7 Sが早くも登場しました。その1年後には、500 Nmの巨大なトルクと330 PSの最高出力を誇る3.5リッターのターボ・エンジンもE24のクーペ・ボディに搭載されています。限定モデルであったため、このクーペ・モデルは、ひと際特別な存在となりました。非常に短い期間の中で、30台のみが生産・販売されました。

 
1982年の価格表を見ると、いかに高度な技術を採用していたのかが明らかになります。例えば、インタークーラー、Dr. Cser発案の複合過給システム、AFT製電子制御イグニッション(燃料カットオフ機能付き)、KKK製ターボチャージャー「K27」、機械式燃料噴射システム「Pierburg DL」(エアフロー・メーター付き)などが備わっていました。カルダン・トンネルの小さなホイール(いわゆる「スチーム・ホイール」)を利用することによってブースト圧を0.45~0.9 barの範囲で調節ができたことから、生み出せる出力が250~330 PSの範囲で変化しました。生み出されたパワーは、新開発のZF製6速トランスミッションとロック率25%のリミテッド・スリップ・ディファレンシャルを介し、2本のリヤ・ホイール(Pirelli P7、225/50 16)に分配されました。

ピンストライプのモデルに備わる蒸気エンジン

しかし、技術だけが際立っていたわけではありません。この素晴しいクルマのエクステリアとインテリアには、ブルカルト・ボーフェンジーペンのサインが記されていました。

当初、サルーンのBMW ALPINA B7 Sは、ALPINAが現在の企業カラーとしている「アルピナ・ブルー・メタリック」のみの設定で登場しましたが、その1年後、このクルマのカラーリングは、「アルピナ・グリーン・メタリック」のみの設定となりました。いずれの場合も、ゴールドのALPINAデコセットを用いている点が特徴です。スモール・シリーズの個性は、インテリアにも表れています。グリーン/ブラック/イエローのタータン・シート・センターを採用するブラック・レザー・シートは、表皮を手掛ける社内のワークショップでハンドメイドされたものです。

 

この限定モデルは最初から大きな需要があったため、わずか数日で30台が完売しています。ドイツに26台、スイスに2台、そして当時はまだ比較的新しい市場であった日本に2台が納入されました。これが一つの理由となり、現在、このクルマはかつてないほどの人気を博しています。そしてRMサザビーズなどの有名なオークション・ハウスでは、愛好家らによって高額での取引きが行われているのです。

テクニカル・データ
エンジン:R6ターボ
排気量:3453cc
最高出力:243kW(330 PS)
最大トルク:500Nm
0-100km/h加速:5.8秒
最高速度:262km/h

最高の仕上がり:BMW ALPINA B7(G12)

「開発の最終段階にあるBMW ALPINA B7は、ALPINAの7シリーズとして史上最高の完成度を誇っています。まさにALPINAとBMW 7シリーズの集大成であると言えるでしょう」。ALPINAのCEOを務めるフロリアン・ボーフェンジーペンは、ディンゴルフィング工場で製造される最後のBMW ALPINA B7を受け取るにあたりこう話しています。BMWで工場長を務めるクリストフ・シュレーダーは、共同CEOである 2 人のボーフェンジーペン兄弟に対し、最後の2台となるグリーンのモデルとブルーのモデルを個人的に手渡しました。どちらもアルピナを象徴するカラーリングです。「ALPINA とディンゴルフィング工場は、長期にわたる深いパートナーシップで結ばれています。最終世代のB7 モデルだけでも、最高品質のクルマが2,000台以上ここで生産されました。生産されたクルマはブッフローエの工場で洗練度が高められるとともにカスタマイズが施されます。アルピナ・グリーンでカラーリングされた最後のBMW ALPINA B7を前にすると、私たちのコラボレーションの歴史が目に浮かびます。このクルマは、このあとすぐアリゾナ州のスコッツデールへ送られます」とアンドレアス・ボーフェンジーペンは車両引き渡しのセレモニーで述べています。