新車時のスペックシートを見るとこのモデルがいかに高度な技術を採用していたかが明白になります。当時としてはまだ採用例が少なかったインタークーラーをはじめ、Dr. Cser開発のレゾナンス式(共鳴)インテークマニホールド、AFT製電子式点火システム、KKK製 K27ターボチャージャー、Pierburg(ピエルブルグ)DL型機械式インジェクションシステムなど、数々の先進的なシステムが採用されていました。このB7 S Turbo Coupéでは車内のセンタートンネル部に備わるダイヤルで、ブースト圧を0.6~0.9barの範囲で調整することにより、出力を250~330PSにコントロールすることが可能でした。生み出されたパワーは、ZF製5速マニュアルギヤボックスとロック率25%のLSDを介して、Pirelli P7(225/50 16)を履いたリヤホイールに伝えられました。
ブルカルト・ボーフェンジーペンの美学の結晶。アルピナ草創期を代表する一台
しかし、技術だけが際立っていたわけではありません。この素晴らしいクルマのエクステリアとインテリアにはBMWアルピナを創業したブルカルト・ボーフェンジーペンの嗜好が盛り込まれていました。リムジンのB7 Sには現在ALPINA社がコーポレートカラーのひとつとしている「ALPINAブルー」のみの設定、クーペのB7 Sではもうひとつのコーポレートカラーである「ALPINAグリーン」のみの設定とされました。いずれの場合もゴールドピンストライプのALPINAデコラインが備えられていることが特徴です。またインテリアも個性的で、クーペにはセンター部にグリーンを基調とするタータンチェックの布地をあしらったブラックレザーシートが採用されています。もちろんこれはALPINA社内の工房でハンドメイドされたものでした。