リバース・エンジニアリング@ アルピナ
継続的な開発―これはアルピナの中でも認められたスタッフによって実践している信条です。この考え方は、リバース・エンジニアリング分野の開発チームにも当てはまります。そこでは、歴史的な部品や現代のプロトタイプパーツがデジタル空間に移されます。リバース・エンジニアリングでは、例えば部品が古くて生産設備がない場合や、手作業で作られたプロトタイプのパーツが、3Dスキャンによってデジタルで記録されます。その後、CADソフトウェアを使って再構築されます。
最先端の3Dスキャナー
アルピナがリバース・エンジニアリングで使用する3Dスキャナーは、最先端の技術であり、最新の基準に適合しています。スキャナーは携帯できるため、車両全体やリアスポイラーやフロントスポイラーをはじめとする個々のボディパネルも車両から取り外すことなくスキャンできるのです。このスキャナーは、空間座標の形で形状を完璧にキャプチャするように設計されており、それらは何百万もの点から構成されることもあります。スキャンの精度は最大0.050mmで、スキャンした部品の細かなディテールをすべて捉え、詳細なデジタルモデルを作成することができます。
編集ソフトウェアでの複雑な微調整
部品をスキャンする際には、さらなる加工に最適なベースとなるシームレスな3Dモデルを作成する必要があります。可能な限り慎重かつ完全にキャプチャすることが重要です。スキャン後、デジタルモデルは複雑な工程を経て処理され、すべての欠陥や不具合が取り除かれ、最良の結果を得られるように調整されます。この作業には、処理ソフトウェアにおける高い専門知識と精度が求められます。
「部品の品質によっては表面や不具合を修復・補正するために多大な労力が必要となります。これにはしばしば数時間もの詳細な作業となることがあります。」と、アルピナの統括車両開発部門の長であるドミニク・ローダーは説明しています。
ヴィンテージカーやクラシックカーに取り付けられている大型の重要なパーツは、車両に取り付けられたままの状態で正確にスキャンする必要があります。これにより、部品の形状がそのままに、取り付けに必要な状態が損なわれないようにします。多くの場合、これらの部品は経年変化の劣化による損傷や擦り傷が見受けられることがあります。その車両が長年にわたって多くの走行距離を重ねてきたことを考えれば、こうした損傷は珍しくありません。したがって、生データからCADモデル作成に必要な完璧な部品データを得るまでには、多くの時間と精緻な修正。調整作業が必要です。最終的なデジタルテンプレートが正確に作成されることで、オリジナルの部品にできる限り忠実で高品質な部品が再現されるのです。
クラシックデザインの再生産
ドミニク・ローダーは例として、製造設備が存在しなかったクラシックなアルピナ・ホイールの製造を挙げています。「私たちはヴィンテージカーから適切なホイールを選び、スキャナーでデジタル化し、詳細なデータ処理を経て、CADデザインに使用できる3Dモデルを作成しました」とローダーは述べています。このプロセスは、クラシックなデザインと現代の製造工程、そしてその品質要件を融合させたものです。この方法は、アルピナが今後もALPINA ClassicおよびALPINA Engineeringのラインアップの製造と拡充において活用し続けるプロセスです。リバース・エンジニアリングの手法で開発できる部品は多岐にわたります。車両のエクステリアに関連する部品、例えばエアロパーツやホイール、さらには車両の維持に必要な機能部品も、この方法で再生産することが可能です。
リバース・エンジニアリングのおかげで、製品開発プロセスの効率化とイノベーションが迅速に進められ、クラシック部品が再生産可能になりました。これらのアドバンテージは、アルピナのエンジニアやデザイナーが今後、コンプリートカーや部品の開発プロジェクトにおいて今後も活用し続けることでしょう。
*本記事は独アルピナ社(ALPINA Burkard Bovensiepen GmbH + Co. KG )発行のニュースレターの翻訳であり、日本市場と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。